《「性といのち」の大切さ 》第3回 思春期の課題

マナ助産院院長 永原郁子

 「私が生まれてきたのには意味があるんだ」「私は大切な1人なんだ」「私は愛されているんだ」
無邪気で可愛かったわが子が、急に口数が少なくなり、怒りっぽくなり、何を考えているのかわからなくなる――。
これがその後数年続く思春期の始まりです。個人差はありますが、思春期の子どもは何かしらイライラしていて扱いにくいものです。お母さんの言うことにいちいち腹が立ったり、お父さんのことが急に嫌になったり、自己嫌悪に陥ったり、大人社会を批判したり、何を言われても気に食わない。家族の平和がどこかに行ってしまったような嵐の日々……そもそも思春期とは何なのでしょう。
思春期とは生殖機能の成熟を中心として、心身ともに子どもから大人に変化する時期のことで、二次性徴の始まりから終わりまでを言います。だいたい10歳から20歳ぐらいまでの期間をさします。本人も手をこまねくイライラ。その原因は人間の状態を決める四つの要素、すなわち、身体、精神、社会性、霊性のアンバランスにあります。体が急激に成長するにもかかわらず、精神や社会性、霊性の成長は比較的緩やかです。精神(心)は色々な経験をすることで成長していきます。成功、失敗、達成、挫折、努力、放棄などプラス経験やマイナス経験を糧として心は成長していきます。
社会性とは色々な出会いと考えるとわかりやすいです。人との出会い、本との出会い、考え方や価値観との出会い、職業や生き方や人生観との出会い、そして自分との出会い、神との出会い、様々な出会いを通して社会性が培(つちか)われていきます。
霊性は神との関係です。自分は神に祝福されていると確信すること(少なくとも呪われた存在という疑いがないこと)は円満な生き方を築く基礎になります。
これらの3つの成長に先駆けて目覚しく成長するのが、身体なのです。性ホルモンが分泌され始め、男の子は筋肉質の体つき、体毛、声変わりなどの変化とともに精巣では精子が作られ、射精が始まります。女の子は丸みを帯びた体つき、体毛、乳腺が発達して乳房が大きくなるなどの変化とともに、卵巣では卵子のいくつかが成熟し、排卵と月経が始まります。これらの二次性徴の生理を知ることも大切ですが、これらの変化は子どもたちにとって、大人になるための準備の始まりであり、どのようなテーマを持って社会に飛び出そうかと考え始める時期なのだと、自覚させたいと思うのです。

思春期の親が学ぶべきこと

また親としても学ぶべきことがあります。まずわが子の二次性徴を、喜ばしいものと受け止めることです。それが自分の性を肯定的に捉える基盤となります。そして子育ての転換期と自覚することです。それまでは指示的、命令口調の子育てだったかもしれませんが、子どもが自ら考え、トライすることを見守り・支える子育てに変えなければなりません。アドバイスをしても、決定の多くは子どもにさせることです。時には折衷案を出すこともあれば、親が絶対譲歩できないこともありますが、基本的には子どもにやらせてみることです。結果的に失敗しても「だから言ったでしょう」とは言わず、再チャレンジを支えます。
またこの時期はそれまでとは異なり、やけに大人っぽく接してくることもあれば、妙に甘えたい時もありますし、理論的になることもあるのです。その時々のわが子の心に合わせて対応するのが良い交流をもつ秘訣だと思います。また「あっちに行って」と言ったとしても、側から離れてほしいと本当に思っているわけではないことも多くあります。だからといって接近しすぎると嫌がります。距離感を探りながら頃合を見て、近づいていくのが得策かと思います。とにかく子どもはイライラを受け止めてほしいのです。親はしっかりとした壁にならなければなりません。ぶつかりがいのある壁、踏みとどまって立ち続ける壁、高からず、低からず、弾力もほどほどの壁、子どもが安心してぶつかることのできる壁になることが、この時期のわが子の成長を支えるのです。
また色々なことに興味を持ち、吸収する時期ですが、自分にとって有益な情報と自分をダメにする情報があることを教えたいです。それを上手に取捨選択できる基盤を持たせたいのです。それには親がわが子に、健全に育つための言葉を常に発信しておくことだと思います。聖書の中にはそのような言葉がちりばめられています。神様から知恵をいただいて、わが子の思春期を支えることができる親でありたいと思うのです。(月刊「いのちのことば」2011年1月号掲載)

1993年神戸市北区ひよどり台にてマナ助産院を開業。
自然出産や子育て支援を通して地域母子保健に携わる。
2000年に性教育グループ「いのち語り隊」を立ち上げ、幼稚園、小中高校、保護者や教職員に向けて講演を行う。
「性を語ることは、生きることを語ること」という信念のもと、「いのちと性」の大切さを年間約120か所で語る。
その活動は注目を集め、TBSテレビ「情熱大陸」やサンTV「ライフライン」でも取り上げられた。「ティーンズのための命のことがわかる本」など執筆活動にも精力的に取り組む。
また、育てられないと悩む女性が24時間訪れることが出来る場所の設置を目指している。
神戸大学大学院保健学研究科臨地教授、神戸市立看護大学臨床教授など助産師の育成にも尽力する。

 

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