《旬人彩人》ブリーダー 倉臼 華

ブリーダー 倉臼 華(くらうす はな)

日本生まれ、日本育ちのアメリカ人。「倉臼華」は通称で、本名はハンナ・クラウス。1994年生まれの22歳。専門学校で動物看護師、ドッグトレーナーの資格を取得し、2012年より犬舎「YUSHAケンネル」を開業、現在に至る。日本ホーリネス教団八王子キリスト教会員。

神様が造られた命を輝かせて

幼い頃から犬の人懐っこさ、忠実さに魅せられ、十代後半でブリーディングを開業。
命を扱う重責を誠実に担い、数年で愛犬家たちの信頼を勝ち取った。
その仕事ぶりの背後には、神への絶対的な信頼と祈りがあった。

18歳でブリーダーとして開業

東京都八王子市、高尾山麓の国道脇に1軒の犬舎がある。車を停めると、敷地内で遊んでいた犬たちが競って門扉に群がってきた。「お客さんだ!」「遊んで」とばかりに、しっぽをぶんぶん振って歓迎してくれる。中型の犬種がボーダーコリー。イギリス原産の牧羊犬で、最も知能の高い犬種として知られる。それより小さめで、白と茶の毛色の犬がコーイケルホンディエ(通称コイケル)だ。原産国オランダの王室でも飼われていたコイケルは日本ではまだ希少種で、ブリーダー自体も数少ない。この2犬種を専門にブリーディングする、ここ「YUSHAケンネル」は、祈りと多くの人の協力のもと、倉臼さんが弱冠18歳で立ち上げた犬舎なのだ。

「ブリーダー」と聞くと何をイメージするだろうか。近年、動物の命が軽んじられる悲惨な事件があとを絶たず、「命の売り買い」「不幸な動物を増やす」といった批判的な見方も少なくない。倉臼さん自身も、子どもの頃は否定的なイメージを抱いていたという。

倉臼さんは1994年、在日アメリカ人である両親のもとに生まれた。祖父母が宣教師で、父親は会社勤めをしながら個人で伝道するなど、信仰を大切にする一家でのびのびと育った。高尾山麓の自然の中を、8人兄姉で駆け回ったという。その頃飼っていたラブラドール・レトリバーがきっかけで犬が大好きになり、「将来は犬に関わる仕事がしたい」と思うようになった。

同じ頃、「ブリーダー」という仕事の存在を本で知った。「ですが、狭い檻に何十頭も詰め込まれ、散歩もできず名前すらなく、一生に何百匹も子犬を産まされてボロボロになる犬たちのことが書かれていました。まるで〝犬の工場〟だと、悲しくなりました」。ショックと否定的なイメージはしばらく続いたが、その後、友人が経営するアメリカの犬舎を見学したことで、考えが変わる。「犬たちは広々としたケージで飼われ、運動や栄養、適切な訓練など、しっかり管理されていました。何より一頭一頭が愛情たっぷりに育てられていて、犬舎と子犬の飼い主になる人(オーナー)との信頼関係も良好でした。犬もオーナーさんもすごくうれしそうにしていたのが印象的で、私もこういうブリーダーになりたいと思うようになりました」

義務教育までは学校に通い、高校入学の年からホームスクールで学んだ倉臼さんは16歳で高校卒業認定試験に合格。引き続きブリーダーを目指して祈り求める中、家族で震災ボランティアに行った先の宮城で、良い専門学校と出合う。すぐに通信講座で学び始め、動物看護師とドッグトレーナーの資格を取得した。そして卒業後の2012年、ボーダーコリーのユメと、憧れの犬種だったコイケルのシャルロットを迎え、「YUSHAケンネル」をスタートさせた。

営利目的ではなく、理想の犬を追い求める

開業前、頭の良さと人懐っこさからボーダーコリーを扱うことは決めていたが、コイケルを迎えられたのは幸運だった。「コイケルは図鑑で見て一目で気に入ったのですが、日本では珍しく、なかなか会えるものではありません。ですが、たまたま研修に行ったブリーダーさんの友人の方がコイケルを扱っていて、子犬を1匹譲ってくれたのです。神様の導きだと思いました」

とはいえ当時は十代。周囲の協力なしには成り立たず、「家族と先輩のブリーダーさんたちが、本当に助けになってくれました」と話す。特に両親は、犬舎の建物を購入するのに力になってくれ、妹たちは、ほぼ毎週末手伝いに来てくれているという。

最初2頭だった犬たちも、現在ではボーダーコリー九頭、コイケルは七頭にまで増えた。良心的で信頼できるブリーダーとネットワークをつくり、互いに犬の交配をし合うなど、協力関係にある。一つの犬舎だけで交配を繰り返すと血統が近くなり、遺伝病をもった犬が産まれやすくなるからだ。また、ブリーダーが自身の〝理想の犬〟を育てるためにも、様相、性格、動きなどにこだわって交配相手を選ぶ必要がある。「ブリーダーの役割は営利目的の繁殖ではなく、その犬種の〝スタンダード〟を守ることです。どの犬種にも国際的スタンダードがあり、体格、配色、顔つき、動き、知能、性格などが決められています。ブリーダーはこの基準に添って理想の犬を思い描き、それに近づくよう犬を繁殖させるのです」。YUSHAケンネルに雄犬がいなかった頃は、理想の交配相手を求めて長野、京都、岡山まで出向いた。時には海外からも犬を輸入したり、借りたりする。また、ちゃんとした交配相手を探すだけでなく、犬の体調にも配慮し、1年に2回妊娠できるというボーダーでも年1回の妊娠に抑える。生まれた子犬は海外にデータを委託して遺伝病の有無をしっかりと検査している。こうした努力が功を奏し、昨年の「ジャパン・インターナショナル・ドッグショー」で、ボーダーコリーのパリスが他の有力候補を抑えて2位に、続いてチャンピオンに選ばれた。

方針が信頼され、20人待ちの人気

産まれてくる犬に愛情を注ぎ、幸せな一生を送れるよう徹底して心を配る倉臼さんに、愛犬家たちの信頼も厚い。子犬は年30匹ほど生まれるが、これまで買い手がいなかったことはないという。それどころか、コイケルに至っては20人待ちの状況だ。「私はペットショップには子犬を渡さないと決めています。候補の方と顔と顔を合わせて、お互いに納得した上で販売するのです。犬たちが、最後までかわいがってくださるオーナーさんと出会えるようにすることも、大切な仕事です」。現在、オーナーたちから定期的に犬の近況報告が送られてくるといい、〝YUSHAっ子〟の成長する姿を見るのも楽しみの一つだ。「犬を譲って終わりじゃなく、何年もおつきあいできることは本当に幸せです。昨年のオフ会には、45頭ほどのYUSHAっ子が集合したんですよ」

交配相手探し、犬の出産、オーナーとの出会い…それぞれの段階で困難に直面することも少なくない。そんな中で、倉臼さんを支えるのは祈りだ。「子犬の誕生から販売まで、たくさん祈ります。そのつど解決が与えられて、本当に祈りのパワーはすごいと思います」。子犬の誕生に立ち合うたび、神が造られた命の精密さ、完璧さ、美しさに感動し、すべてのものが神の御手にあることを思わずにいられないという。「これからも神様にすべてをゆだねて理想とする犬を目指し、より信頼を得られるブリーダーになりたいです。大変なことも多いですが、神様が備えてくださった道。大好きな犬と仕事ができることは、喜びです」と語ってくれた。【「百万人の福音」2017年5月号より】

(藤野多恵)

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