《旬人彩人》絵本読み聞かせ 高橋圭子

プロフィール:1963(昭和38)年、長崎県生まれ。佐賀大学教育学部を卒業後、中学校教師に。1年後、結婚と同時に東京都町田市に転居。3人の子の子育てをしながら、娘の通う学校で起きた学級崩壊に保護者として深く関わり改善に貢献。その体験が評価され、地元の教育委員会委員を二期8年務めた。町田バプテスト教会員。現在、大人のためのお話し会、子育て講演会などの講師を務めている。

子育て中のお母さんを絵本で励ましたい

絵本読み聞かせ子育て講演 講師 高橋圭子

よい絵本には、子どもだけでなく、大人の心にもスッと入っていく力がある。子育て中の親や、子どもたちに絵本を読み、そこに秘められたテーマを優しいことばで語る髙橋圭子さん。地元の公立学校を中心に、講演回数は8年間で100回以上になる。子育て中の親たちが涙を流して聴く朗読の世界を訪ねた。

聴き手の母親たちに寄り添い朗読

髙橋さんの絵本の朗読は、一人芝居のようだ。登場人物によって声色を変え、リズムや間も絶妙で、よどみなく読み進めていく。自ら考えた演出と、背後に感じられる静かな意志が、しだいに聴衆の心を作品の世界に引き込んでいく。子育て講演会で取りあげる物語は親子モノが多い。クライマックスになると、会場に集まった母親たちから、鼻をすする音が聞こえる。

朗読後、髙橋さんが子育ての実践的なアドバイスを語る。その内容は、徹底して親に寄り添う視点で温かい。聴衆の多くは、帰ったら子どもに優しいことばをかけたくなるはずだ。

学級崩壊した学校を親たちが建て直す

絵本の読み聞かせに取り組み始めたのは、18年前、長女が通う小学校で起きた学級崩壊がきっかけだった。

「その対策として保護者による読み聞かせが始まり、私の所属教会の牧師からも、読み聞かせの良さを聞いていたので、メンバーに加えてもらいました」

下の子2人もその小学校に通ったため、約8年間、この活動に関わった。

しばらくして、今度は次女が中学1年の時にクラスが学級崩壊し、それが学年全体に広がった。生徒が廊下ですれ違った他の生徒をいきなり殴ったり、足を引っ掛けて転ばせたり、おとなしい子の弁当を取るなど、理不尽なことが横行した。

「この事態に、次女から『お母さん助けて』と頼まれました。そこで、娘が中学2、3年生の時にPTAの学年委員長になって活動しました」

このとき、祈りの末に3つの対策を立てた。

  1. 実績のあった絵本の読み聞かせ。
  2. 応援隊。保護者が輪番で毎日学校に入り、校内のあちこちに落ちているお菓子の食べカスなどのゴミを掃除し、床に張り付いた多くのガムをヘラではがし、黙々と掃除した。
  3. 機関紙を発行して、学校の状況、子育てに大切なことなどを発信した。保護者たちも、次第に発行を楽しみにするようになったという。

「この時期、本当に祈らずにはいられませんでした。活動を続けるうちに、生徒たちがだんだん落ち着いてきて、輪番の親が校内で自然な存在になっていきました。親はひたすら校内をきれいにして、文句も言わず見守りに徹したから、子どもたちは安心して変わっていった」

教会での会では、演劇を行うことも

教育委員会での働きから子育て講演も

このときの体験を書いた論文が評価され、2008年から、地元の教育委員会の委員を2期8年、2016年6月まで行った。それがきっかけとなって、読み聞かせの依頼が始まり、読み方のコツや、サークルの立ち上げ方などを各地で話すようになった。そして、公立学校の校長先生から「その話を保護者にしてほしい」という要望があり、子育て講演会に発展していった。

「講演会を60分間じっと聞いているのはつらいと思っていたので、大人向けの読み聞かせを織り交ぜながら、自分のことばで話そうと思いました」

公立学校で行っている道徳地区公開講座など、保護者や地域の方々を対象とした子育て講演を中心に、幼稚園、小学校、中学校、学童保育の児童、デイサービス施設の高齢者、珍しいところでは企業からも「社員の癒やしに」と要望が来ている。その数は、8年間で100回以上になっている。

「私が行っている所は主に公立系の場所なので、信仰について語れないのですが、真理は言えます。『命は与えられたもの』『自分自身を大事にすることと同じように、あなたの周りの命も大事にすること』『人との出会いもまた与えられたもの』『愛するということは、自分のことよりも他の人のことを一番に考えること』など、『神様』と言えないだけで、神様の真理を伝えていると思っています」

講演で大切にしていることは、お母さんたちが、具体的に今日からできる内容だ。

「私自身が子育てで試され、丸裸にされて、自分に愛がないことをとことん示されたので、私は神様に祈る日々でした。神を知らないお母さんたちに真理を伝え、少しでも『今日、私にもこれができた』と言えるような実感をもってほしい。

親が笑顔でいるだけで、子どもたちは安心して、自己肯定感が高まります。子どもがお手伝いをしてくれた時、心から『ありがとう』と言うことも、今日からできることです」

三浦綾子の小説でキリストと出会う

18歳で故郷の佐世保を離れ、教員になるべく大学のある佐賀にいた時、失恋の痛手の中で、ふと出合った本が『道ありき』(三浦綾子著)だった。

「それは著者の自伝的小説で、三浦さんと前川正さんの純粋な愛が描かれていました。前川さんは三浦さんに何も求めず、与えるだけの愛でした。私は、見返りを求める愛し方をしていましたから、前川さんの姿に衝撃を受けました。何が違うんだろうと思ったら、ああ、クリスチャンで神様を知ってるからだと気づいたのです」

その後、大学の外国人教師が自宅で開いていたバイブルクラスに行き、創造主なる神様の存在はわかったのだが、自分が罪人であることがわからなかった。そのうち、教員採用試験に受かり、先生になると忙しくなるから教会はやめようと思っていた。

「ところが、受け持ったクラスに自閉症の子や不登校の子がいて、悩みました。特に自閉症の子はトラブルが多くて、他の生徒から『先生は、あの子をえこひいきする』と言われてしまった。なりたかった先生になったのに、なぜ子どもたちにイライラしたり、嫌な思いをもつんだろうと思った時に、ストンと罪がわかったのです。

自分の罪が私を苦しめ、自分ではどうしようもない罪のために、イエス様が十字架で身代わりになってくださったと。そして、一学期が終わってすぐ、洗礼を受けました」

五十代の今 保育士試験に挑戦中!

今、髙橋さんは保育士の資格を取ろうと、通信教育で勉強している。所属教会の牧師が理事長をしている保育園がキリスト教主義なのだが、現在はクリスチャンの保育士がいないということを聞いたからだ。

「最近の保育士は子どもを保育するだけでなく、地域の親の子育てを援助するようになっています。それに、この保育園なら聖書の話もできます。

子どもたちの世話だけでなく、お父さん、お母さんたちに、私が子育てをしていた時に聞きたかった話をしたい。夫婦とも働いていると毎日の生活に流されてしまいがちですが、立ち止まって、子どもとの関係を見直してみる必要があることを伝えたい」

保育士試験の九科目を覚えるのは大変なのだが、国家試験に挑戦する。ダメだったら次回に再挑戦するつもりだ。

崩壊した学校の救済、教育委員会の委員、子育て講演会の講師と、多岐にわたる活動にはいつも困難があったが、神様への信頼と祈りで乗り越えてきた。

「祈れば、いつも思いもよらない助けがありました。クリスチャンといえども心に罪がたくさんある私に、神様がキリストという衣(ローマ13・14)を着せてくださったから、やってこれました」

だからこそ、五十代の今から保育士試験に挑戦という困難な道にも向かう。「神様から示された方へ、これからも生きていくだけ」と語ることばに、気負いはなかった。

(取材:砂原俊幸)【「百万人の福音」2017年9月号】

 

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