《寄稿》朝鮮半島の南北首脳会談、米朝首脳会談を考える

  • 2018/7/13
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朝鮮半島の南北首脳会談、米朝首脳会談を考える

南北の和解・平和に適応できるか。南北対立が脅かした地域平和

徐正敏(明治学院大学教授、同キリスト教研究所所長)

朝鮮半島は、1945年に日本の植民地から独立した直後、分断され、そのまま70年以上が経過した。この間、50年には朝鮮戦争が勃発し、この戦争で軍人・民間人含めて500万人以上の人命が失われた。ここには、韓国人・朝鮮人以外にも、南側を支援した国連軍の16か国の兵士、北側を支援した中国義勇軍も含まれる。また、統計上算出できないが、経済的損害も甚大であった。戦争は約3年にわたって朝鮮半島の南北地域で展開し、53年7月27日に休戦協定が結ばれた。しかし、その後65年間、南北は、休戦ラインを中心に軍事的緊張関係を続けてきた。その他にも、朝鮮半島は、南北の間のイデオロギーの対立・葛藤、3000万人以上の離散家族、局地的な戦闘などの問題を抱え、これらが朝鮮半島だけではなく、東アジアの平和を脅かす大きな要因になっていた。

特に、早くに飛躍的な経済高度成長を遂げた韓国とは違い、北朝鮮の社会主義政権は社会経済的にバランスを保った発展をもたらすことができなかった。そのため、軍事力の強化に集中し、とりわけ核兵器の保有を目指し、それによる国内体制の維持を図り、対外的にも脅威を与えることで自国の存在感を示した。このような北朝鮮の政策は、韓国はもちろん、東アジアの勢力の均衡を危ういものとし、東アジア情勢に関わる日本、アメリカ、中国、ロシアなどの諸国の間に対立・葛藤をもたらした。

韓国の場合は、社会経済的な成長はある程度遂げたが、クーデタによる軍事独裁政権の成立と政治的不安、これに対する民主化運動の勃興、国内の深刻な理念の対立などが続き、政情が不安定であった。一時期、韓国に民主化政権が成立し、金大中政権、盧武鉉政権の時代には、断片的に南北首脳会談が進行され、和解協力の時代を表出する雰囲気が形成されたことがあるが、これが持続的平和体制を実現するまでの展開にはならなかった。その後、北朝鮮が積極的な核兵器開発や長距離ミサイル発射などを進め、韓国の保守政権との対立が激化した。こうして、緒についた南北交流は中断された。

歴史的な対話への転換

それが、キャンドル革命を経て、韓国に新しい民主政府である文在寅政権が成立し、2017年の平昌オリンピックを契機として、南北対話の新しい局面が開かれた。4月27日に第1回南北首脳会談、5月26日に第2回南北首脳会談が開催され、そして、ついに6月12日に米朝首脳会談が実現したことは、これらの首脳会談が朝鮮半島の平和実現の出発点となる希望をもたらした。4月に、南北の首脳が、朝鮮半島の分断と戦争を象徴する場所である板門店において共に対話する姿は、メディアにより全世界に放映された。6月の米朝首脳会談も世界中が注視した。首脳会談を見守る韓国人・朝鮮人、東アジアの人々には感動的な場面の数々であった。多くの人々が感じた感動自体が歴史的な転換点なのである。

敵対国家であった南の韓国と北の北朝鮮、また、北朝鮮とアメリカの首脳が、出会って、平和を目標とする対話をする、そのことへの期待が歴史的なものであるのは疑いない。首脳会談を契機に、朝鮮半島の非核化と終戦宣言、平和条約締結まで至ると、東アジアの平和が実現されるはずだ。

このような状況における、南北の平和を目指す新しい歴史展開の意義、それにあたって克服しなければならない難題、合わせて日韓キリスト教のいくつかの課題を考えておきたい。

積極的展開と保守勢の懸念

第1に、平和ムードのこのような展開は、朝鮮半島の南北両国、北朝鮮とアメリカ、アジアの周辺国が、平和実現のために一部の既得権を放棄していく可能性が見える。例えば北朝鮮の若い権力者は、従来保持してきた孤立・独占・武力(核武装までも)を放棄し、新しい未来を開拓したいとの意志を見せている。韓国もキャンドル革命後の民主政権として、朝鮮半島の平和のためにはいくつかの社会経済的な負担を受け入れることを積極的に検討している。アメリカ、中国、さらに日本までも、東アジアの平和実現のために、多少の犠牲を払っても積極的な役割を果そうとする姿勢を見せている。ここに歴史的な意義がある。

第2に、歴史的な南北の首脳間の出会いにより、多くの韓国人は、非常な感動を経験した。それは、韓国において歴史的に積み重ねられてきた、心の奥底にある「ハン」の感情、つまり恨みや悲しみ、悲哀や無常観や諦め、あこがれや妬み、悲惨な境遇からの解放願望といった重層的で複雑な感情を乗り越えさせるようなエネルギーを持った感動である。ここに至った要因は、新しい政治的展開もあるが、何よりマスメディア、SNSによって首脳会談の影響が深く浸透し、南北の出会いを感動的に受け止める土壌となったことにある。

第3に、しかし、大きな課題もある。韓国の保守的既得権勢力は、まだ本当の意味での南北の和解・平和に対する準備ができていない。彼らは今まで、南北の分断・対立・葛藤を利用し、自らの利益を守ってきた勢力である。このことは、韓国内部の保守勢力だけではなく、周辺国における保守勢力も同様である。これらの勢力は、東アジアの平和のため、これまで自分たちの抱えてきたものを克服しなければならない。これが大きな課題の一つである。

第4に、こうした状況に対する韓国キリスト教の立場を考えなければならない。韓国のキリスト教は、基本的に分断と戦争の大きな被害者であると言える。被害者であることが背景となって、韓国には徹底的な親米反共のキリスト教が形成された。韓国のキリスト教の主流派は、本当の意味での南北の和解・平和にはまだ適応できない。例えば、韓国の保守的キリスト教の一部は、今でも、星条旗と太極旗を掲げて、韓国政府の北朝鮮の政権を認定する南北和解政策を批判するデモを続けている。彼らに新しい時代認識が必要であることも、課題の一つである。

日本の教会の参与と仲介を

最後に、こうした近年の動きに対する日本のキリスト教の課題を考えておきたい。南北の分断と朝鮮戦争、現代史の流れにおいて日本の歴史的責任は軽いものではなく、朝鮮半島の分断の責任は日本にもある。この責任を、早めに自覚した日本のキリスト者は、戦争責任告白以後、特に韓国のリベラルなキリスト者と協力しながら、韓国の民主化運動と朝鮮半島の統一運動に対して、積極的な協力者、仲介者の役割を果してきた。韓国の民主化運動と統一運動の歴史の中で、日本のキリスト者たちは、歴史的に大きな役割を果してきた。こうした歴史を基盤にして見ると、これからの南北の平和、東アジアの平和の未来のために、日本の人々の協力、日本のキリスト者たちの積極的な参与が期待されるのである。
【クリスチャン新聞7月8日号より】

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