《対談》バブルで受けた神の取扱い

  • 2018/7/31
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泉堅氏追悼紙面再掲 シリーズ/対談

バブルで受けた神の取扱い

泉堅 万座温泉・日進館 代表取締役 × 中野雄一郎 伝道者

万座温泉日進舘会長で、シンガーとしても活躍した泉堅(いずみ・けん、本名・黒岩堅一=くろいわ・けんいち)氏が、7月12日旅行先のホテルで急性心不全のため逝去した。氏の働きを覚え、本紙2017年7月21日号で掲載した中野雄一郎牧師との対談を、再掲する。

「万座の温泉は美容の温泉、長寿の温泉、癒しの温泉、健康の温泉でございます。1日2回入ると2年長生きいたします。3回入ると3年長生きいたします。4回入ると死ぬまで長生きいたします」。巧みなトークと歌で宿泊客を楽しませるフロアーショーを始めて20年。泉堅さんのショーは5000回を数える。このショーを楽しみに温泉に来る宿泊客も少なくないという。ショーの魅力はどこにあるのか。ショーにかける泉さんの思いからは、人間が根源的に抱えている普遍的な課題が浮かび上がってきた。今回も中野牧師が鋭く迫る。【髙橋昌彦】

バブル後に受けた神の取り扱いフロアーショーが伝道の場に

中野 万座温泉というのはかなり歴史のある温泉とうかがっていますが。そこで旅館を経営なさっていらっしゃいますね。

泉  文献の記録は江戸時代くらいからあるようですけど、湯治場として湯小屋が建つのは明治に入ってからみたいですね。それを明治の後半に地元の方が旅館になさったんですけども、手放したいということで祖父が買い取ったんです。昭和の初めごろだと思います。それが日進館です。会長に就任したのは1987年です。

中野 バブルの真っただ中ですね。旅館業の景気も、同じように良かったんじゃないですか。

泉  旅館は何の心配もなかったんで、私は普段は東京にいて、株式投資と不動産投資に明け暮れていました。中古マンションの売買が多かったんですが、1億のマンションが、数ヶ月後には1億5千万になったり、800万の新宿駅南口のワンルームマンションが、売った買ったを繰り返して、最終的に1億までいったり。そんな狂乱時代でしたね。短期的にはかなりの利益が出ました。

中野 でもバブルははじけました。

泉  ある時不動産物件が思う値段で売れなくなっているのに気づいたんです。それで持っていたうちのいくつかを残して、あとはすべて手放しました。付き合いのあった不動産業者は、大手を含めほとんど倒産しました。

中野 本業は順調だったのに、なんでそこまでして儲けようと思ったんですか。

泉  事業を拡張したかったんですね。そのための資金が欲しかった。万座だけでは売り上げは限定されています。年間に12億から14億くらいが限界です。国立公園の中にありますから、建物を建てるにも制限があって、万座の中での拡張は望めません。外に出て、日本全国にホテルチェーンを展開したい、ゆくゆくは海外にも進出して、ヒルトンみたいなものをと夢見ていました。

中野 その頃はもう信仰は持っていらっしゃいましたか。

泉  神様を信じたのは20歳の時です。自分の病の癒しの経験を通して、神様を信じるようになりました。繊維筋痛症という、体中に針が刺さるような激痛に襲われる病気なんですが、治療法はありません。

大学も休んでいたんですが、大学の親友で、今弊社の社長で敬愛する、大野克美君が示してくれたマタイ21章22節「また、祈りのとき、信じて求めるものは、みな与えられるであろう」のみ言葉を信じ、6か月祈り続けて癒されました。その後大野君の導きで、東京池袋教会で信仰告白し受洗しました。ですから、不動産売買の時も、神様は信じていました。

中野 それから大きく変わったようですが、何かきっかけがあったんですか。

泉  バブルがはじけて万座に戻って来てからですが、これから何をしていけばいいのかと考えていたころに、不思議な体験をしたんです。

ある日トイレに入ったら、神様に触れられたとしか言いようのないことが起こったんですね。平安と喜びというのか、心が本当に満たされて、そんなことが何日も続きました。

それからです、仕事に対する意識が変わったのは。それまでは自分が何をしよう、あれをしよう、これをしようと考えていましたが、その時から、とにかく神様の役に立ちたい、そのために当館は支えられている、と思うようになりました。

その頃カナダからの研修生が多くて、10名くらいいたかな、みんな20歳代なんですが、ホームシックにかかるんですね。万座は、他の温泉街とは違って、娯楽施設など無いですから。一番近いコンビニでも車で30分はかかります。それで泣き出す子もいました。

そんな彼らが、お客様のために何かショーをしたいと、彼らの方から言い出しました。自分たちが楽しみたいという気持ちもあったのだと思います。それで全員外国人のショーが始まりました。

中野 そのショーには、泉さんは加わらなかったんですか。

泉  私は「アブラハム堅」という名前で司会をしました。経営者だという立場は隠しました。そのうちにお客様から「司会者も何か歌え」と言われて歌い始めたのが、フロアーショーのきっかけです。

数年したある時、レコード会社の徳間ジャパンのプロデューサーがショーを見ていて、レコードデビューしないかって、言ってきました。でも私にはそんなつもり毛頭ありませんし、立場を明かして断っていたんですが、あまりに熱心に誘ってくれるものですから、その熱意にほだされて半年後に「泉堅」の名前で「ありがとう」という曲を作り、デビューしました。48歳の時です。

中野 ショーの内容はどのようなものだったんでしょうか。

泉  最初はいわゆる「歌謡ショー」でした。温泉旅館などでよくありますね。それが、本当に不思議なんですけれど、何かきっかけがあったわけでもなく、いつの間にか、徐々に徐々に、伝道の場に変えられていったんですね。ゴスペルシンガー様、クリスチャンのミュージシャン様も、しだいにご協力して下さる方々が現れました。牧師先生も毎月いらして下さる方が、いまでは5名様いらっしゃいます。

感動こそがお客様のニーズ 5割のリピーターに支えられて

中野 「伝道の場」ということは福音を語るわけですか。

泉  初めのころはそれをやって失敗しました。私も伝えたいという気持ちがあるものですから、福音をそのまま語ってしまったんです。お客様からは反発されましたね。「客に向かって説教するとは何事だ」というわけです。

ショーは夜の8時から始まりますから、男性の方はだいたいお酒が入っています。野次られたり、ビールかけられたり、部屋に呼ばれて30分土下座させられたこともありました。腹を切れと言われました。団体客がキャンセルになったこともあります。でも、考えてみれば当然ですね。お客様はショーを見にいらっしゃる。伝道集会に来るのではありませんね。宗教の話を聞こうと思って来ているわけではありません。そこにどう切り込んでいくか、勇気と知恵が試されます。

中野 一度ショーを拝見させていただきましたが、感心したのは、神、罪、救いなどのキリスト教専門用語を使わないで、福音の内容をしっかりと伝えていらしたことですね。日本人に福音を伝えるにはとても有効な方法だと思います。

泉  そういう言葉を使わないのは、言っても理解していただけない、誤解する、反感を買う、戦争になるからです。伝えたいという気持ちは強くありますが、伝えるには時間がかります。相手によっても話し方は変えないといけません。お客様も、その日初めての方もいれば何回も来ている方もいる、連泊されている方もいらっしゃいます。

その時々で話は変えます。何を語るべきかは聖霊様が教えてくださいます。そのために話の引き出しは普段から準備しています。派手な衣装を着るのも、それでお客様が興味を持って下さるからです。これを見ると10歳若返る、と言って下さる方もいらっしゃいます。

中野 泉さんには女性のファンが多いからなあ。(笑)

泉  お客様が求めていらっしゃるのは感動です。この業界は、施設、料理、サービスと言われますが、万座に来るお客様の目的は違います。いわゆる観光旅行ではありません。感動です。癒し、希望です。人生の意味や、救いを求めていらっしゃいます。ご自分で気付いていらっしゃる方はいないと思いますが、どこかでみなさんが求めているんですね。

フロアーショーは霊的な戦場です。ほとんどのお客様がノンクリスチャンです。他宗教の方、宗教に無関心な方や否定的批判的な方、好意的な方ばかりではありません。昔はなんとか全員様を引き留めようとして気を遣っていたんですが、今はやめました。

否定的、批判的な人が一人去れば、好意的なお客様が10人来る真理を知りました。ショーがお客様を選別するんです。景気と人気で仕事をしたり、生きたりすれば、倒産と破滅以外ありません。神気に立たなければ生きられません。

中野 それは牧会でも同じかな。理由にもよるけど、教会を変わりたいという人を、あえて引き留める必要はないんですよ。

泉  クリスチャンの方でも反応はいろいろあります。あるとき偶然2人の牧師先生がショーをご覧になりました。1人の牧師先生は「福音が語られていないから伝道じゃない」と言われました。もう一人の牧師先生は「感動した」と言ってくださいました。

中野 泉さんのところはリピーターのお客さんが多いと聞いていますが、年齢的にはいくつくらいの方たちなんですか。

泉  半分以上のお客様がリピーターだと思います。平均年齢は65歳以上です。70歳台の方が1番多いと思います。みなさんお仕事を終えられて、多少の余裕もあり、自分の今までの人生を振り返って、ぼんやりとその意味を考えていらっしゃるのではないでしょうか。いずれ自分は死ぬ。不満も不自由もないけれども、これでいいんだろうか。そんな神様にしか満たすことの出来ない、魂の問題に漠然と気づいている。

そしてこの年になると、みなさん何かしら体に病を抱えていらっしゃる。体の癒しと魂の癒し、両方必要なんです。それがどうやらここにはあるようだと感じて、何べんも足を運んで下さるのだと思います。

年1回の方、十数回の方、毎月1週間泊まる方、個人、グループ、団体、ツアー様、それぞれ目に見えないもの、金で買えないものを求めて、日本中からいらっしゃいます。

中野 神様から離れている限り、人間ではどうすることも出来ない問題がありますからね。

泉  フロアーショーがきっかけで救われた方がいます。未亡人、主婦、ご夫婦、檀家の奥様、ビジネスマン、40年以上創価学会に熱心だった方々、病が癒された方々、学校の先生、様々です。私は万座に来て45年たちますが、どんどん希望者のプライバシーに入り、救いへと導くチャンスにしたい。今では無宗教の方、宗教に批判的な方、神主様、ご住職様、いろいろなお客様がショーを支えてくださっています。お客様のプライバシーには立ち入らない、それが旅館業の常識です。でも逆をやっています。お客様は家族です。

中野 どれくらいの数の宿泊客が来るんですか。

泉  毎日300人から400人。年間で12万人以上です。この45年間に、全国の大型ホテル、旅館は、ほとんど倒産しました。特にリゾートや温泉地は全滅です。名前が同じでも経営者が代わっている、銀行管理になっている。残っているのは当館だけかも知れません。

しかしこの間、大火災がありました。バブル崩壊がありました。大きな台風に襲撃され、風呂、客室等が破壊され、死者も出ました。そして東日本大震災後はお客様が激減。けっして順風満帆ではありませんでしたが、神様が守ってくれました。

会社は必ず倒産します。倒産するから会社です。2000年もつ会社はありません。倒産しないのは教会です。私は当館を会社と考えていません。教会と位置づけています。経済は道徳の一部だと考えます。

経済至上主義が跋扈している昨今、経済すなわち金にはいのちも人格もありません。死体です。経済は国を崩壊させ、心を破壊します。用い方に十分注意が必要です。人は握り締めている物の奴隷となり、手放すものの主人となるからです。富か神か、今こそ日本がビジョンに立たなければなりません。先の、放蕩息子のような、バブル経済の二の舞いを避けなければなりません。

中野 そういうビジョンを、私たちクリスチャンがまず明確に持たなければならないということですね。

【クリスチャン新聞2013年07月21日号 04・05面】

ゲスト 泉堅さん 日進館 代表取締役会長

本名、黒岩堅一。1948年長野県生まれ。1969年より日進館の運営に携わり、1987年より現職。1996年徳間ジャパンより歌手デビュー。6枚のCDをリリース。家族は妻、2男、1女。全員が旅館の運営に携わる。シンガーソングライター。社団法人日本歌手協会会員。JTJ宣教神学校在学中。日本の道徳の荒廃に深刻な危惧を覚え、クリスチャンこそこのような時に影響力を発揮しなければ、と訴える。

インタビュアー 中野雄一郎

伝道者。マウント・オリーブ・ミニストリーズ代表。ハワイ在住。元JTJ国際学長。著書『聖書力』『必笑ジョーク202』『天声妻語』『必ず儲かる聖書のビジネス』など。

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