MIGIWA ロングインタビュー

  • 2018/5/10
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 取材前の下調べで、人付き合いが得意なほうでないことはわかっていた。人見知りで、注目を浴びることが好きではないという。だとすると今日みたいな撮影の仕事もどちらかと言えば苦手なのかな、などとぼんやり考えているところにMigiwa さんがやってきた。

 「おはようございます。今日はよろしくお願いします」とあいさつするようすは、テンション高くもなく、低くもなく、淡々とした自然体。その雰囲気は撮影が始まってもずっと同じで、常に穏やかな安定感を漂わせながら、あれこれ出される注文に真摯に応えている。

 撮影後の食事会は辞退されたが、インタビューには終始真剣に、ていねいに記憶をたどりながら心を込めて答えてくださった。この日、朝から夕方まで一緒に過ごしたMigiwa さんから見えてきたのは、「人見知りの自分を甘やかさない。かといって無理もさせない」姿。その在り方に芯の強さが垣間見えた。

 小学生の頃から集団生活がとにかく嫌でしかたなかったいう。みんなで一斉に同じことをするも嫌いだったし、たくさん人がいるところに出ていくこと自体、それだけで苦になる。

 中学生になり、集団としてのルールがさらに厳しくなると学校に行けなくなった。行けなくなればなったで、そんな自分のことが受け入れられずに苦しんだ。

 母が悩む姿を見て、「自分がいるから母がこんな思いをしている。自分なんかいなくてもいいんじゃないか」という思いにも襲われた。「ありのままでいい。自分らしくいればいい」と言ってくれる人もいたが、ありのままの自分がどんな自分なのかがわからない。自分らしさがわからない。「ありのままの自分」を演じようともがくことになるだけだった。

 

 学校に行かなくなってしばらくは、小さい頃から家族と一緒に通っていた教会にも行けなくなっていたが、「神様を信じれば、私は変われるのかな。このままじゃだめだ。変わりたい」という思いから、教会にだけは再び行くようになった。

 そんなある日、牧師が語った聖書の中の一つのことばが心に刺さった。

「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している」(イザヤ書434)

 聖書の中でも有名なことばなので耳にするのは初めてではなかったが、この時はまるで初めて聞くような新鮮さをもって心に響いてきた。それは、このことばから「受け入れられようと頑張らなくてもいい。そのままで受け入れている。あなたの中の汚い部分も全部知ったうえで愛している」と語り掛けられたからだった。

「このままではいけない」と思って通い始めた教会で、正反対のメッセージを聞いた時から、Migiwa さんは徐々に変わり始めた。少しずつ自分を肯定できるようになり、少しずつ人の中にも出て行けるようになった

 自宅に引きこもっていた期間のことで、Migiwa さんにはひとつ、あの時代でよかったなと思っていることがある。それは今ほどインターネットが普及していなかったことだ。自分の部屋にコンピュータもゲームもなかったMigiwa さんは、ありあまるほどの時間と持て余していたエネルギーを音楽に費やした。いろんな曲をひたすら聴いたり、自分でも作ったり。

 当初は「何のために生きているのか」というような重苦しい詩を書いていたが、それがだんだん「自分はこんなにダメだけど、神さまが愛してくれた」ことを歌うようになっていった。

 やがてゴスペルシンガーとして活動するようになったMigiwa さんは、アルバム「蟻と宇宙」をリリースし、ゴスペルCCM大賞アーティスト・オブ・ザ・イヤー金賞を受賞。「蟻と宇宙」もアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞した

 ところが、順風満帆に見える音楽活動に、いつしか影が差し始めた。表面的にはいろんなこと軌道に乗り順調に進んでいく中で、忙しさや享楽的な楽しみに心を奪われMigiwa さんの心は、神との対話から遠ざかり始めていたのだ。

外からは見えない軋みだったかもしれない。しかし、歌っている歌詞が自分の本心とずれてきた苦しみ、聴衆に抱かれるイメージが等身大の自分ではないという居心地の悪さが彼女を苦しめた

Migiwa さんの中で、「ありのままの自分」が再び曖昧になってきて、後ろめたさや申し訳なさに邪魔されて、歌う喜びが消えていった。

 

 そんなある日、声が出なくなった。喉頭肉芽腫という病気だった。ゴスペルシンガーの自分が声を失うというこの事態に、Migiwa さんはとっさに、「神様に怒られているのだ」と思った。「しばらく歌ってはいけない」と言われたのだ、と。

 その一方で、「これも神様から与えられた特別な期間で、今のに必要な時間なのかもしれない」と冷静に考える自分もいた。

 のどの調子が少しよくなり、歌うことはできないがしゃべることはできるようになってきた頃、Migiwa さんはアメリカに行くことを決めた。聖書の学びをするためだった。イエス・キリストのことばに、自分の心を探り、練り直し、癒してほしかった。

 留学期間は寮生活で、24時間絶えず周りに誰かしらがいる。落ち込んでいればわけを聞かれるし、逆に悩みを相談されることもある。打ち明け話や、励ましや、ちょっとした議論の合間に、「じゃあ、祈ろう」と、何かと言えばすぐ祈る。時には讃美歌まで歌い出す。

 そんな生活の中でMigiwa さんは、神さまってこんなに近いところにいてくれる存在だったのか、こんなにいつも一緒にいてくれる存在だったのか、と実感するようになった。

 聖書は、神の愛は人と人とのつながりの中に現れてくると教えている。人との接触に大きな抵抗感をもっていたMigiwa さんにとっても、それは例外ではなかった。

 人間関係があまりにも濃密な環境に、時には「もう嫌だ! 一人になりたい!」と思うこともあったが(それはもちろんそうだろう!)「子どもに戻ったかのように自然体でいられ、大家族の一員のようだったあの頃は、本当に天国の時間みたいだった」と、Migiwaさんは振り返る。

 

 10か月の学びを終えて日本に帰るころには、歌う意味がもう一度はっきり見えるようになっていた。そんなMigiwa さんに神様は歌う声も返してくださった。「声が出なくなる前より、いい声になったね」と、よく言われる。

 

 今でも人見知りな性格は変わらない。数年前から、音楽活動のマネージメントも自分でやっているが、電話は苦手なので大抵のやり取りはメールにしてもらっている。ゴスペルシンガー同士の交流会やイベントにも、積極的に出かけていく気はしない。

 でもそれは、Migiwa さんという素敵な女性の素敵な個性なのだと思う。へこみもくぼみもないまん丸な性格ではないかもしれない。でも彼女はこんなふうに歌う。

 イビツな形のわたしを

 あなたがぐるっと囲んでくれた

 するとじゆうが降ってきて

 波紋が空へ溶けて行く

 なめらかに生まれ変わった、

 わたしのまると

 あなたのまる

 

 まん丸ではきっと届けない世界がある。神さまにコーティングされたMigiwa さんの「イビツさ」だからこそ届くことのできる世界がある。

 それは案外自分の「イビツさ」に合う形かもしれないと思えたら、Migiwa さんの音楽を聴いてほしい。

(聞き手)結城絵美子    

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