《レビュー》映画「がんになる前に知っておくこと」

  • 2019/2/16
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ナビゲーターの女優・鳴神綾香の実感のこもったインタビューは”がん”についての情況とがんを抱えて生きる人たちの”人生の質”を身近に引き寄せてくれる (C)2018 uehara-shouten

《レビュー》映画「がんになる前に知っておくこと」

“がん=死の病”から“共存できる病”になった

“がん”という病名を告げられると、「あとどれ位生きられますか」とつい問い返してしまいそう。“がん=死を覚悟する病”という怖さがイメージとして付きまとっている。だが、このドキュメンタリーでは、取材を受けている医療関係者の多くが、がんは侮れないが、今は“共存できる病”と応答し、医療やケア、サポートの現状を詳らかにレポートしている。がんと共存できるようになるために、いたずらに怖れるのではなく、がんのこと、自分のこと、治療のこと、そしてこれからの人生のことを知ることから始めようと優しく励ましてくれる。

日本人の2人に1人が“がん”になると
いわれている今だから知っておきたい

がん保険会社のコマーシャルなどで、日本人の2人に1人が“がん”になることが通説のようにいわれている時代。だが、罹患すると病状進捗、死の病というイメージから逃れたい潜在意識からか、多くの人は自分はがんには罹らないと漠然と思いのかもしれない。しかし、がん患者は1985年以降増加し続けている。本作の上原拓治プロデューサーは、4年前に義妹ががんで亡くなったことから「がんと向き合おう」という思いを出発点に、本作の製作を決意した。

ナビゲーターには、がん検診を受けた時にしこりが見つかり乳がんの疑いがると言われた経験を持つ若手女優の鳴神綾香。検査結果は良性だったが、その間の不安な心情や仕事のこと、これからの人生のことなどを真剣に受け止め、考えたことやがんという病気について素朴な疑問を専門の医師や看護師などの医療関係者、ケア支援システムにかかわるサポーターら15人に尋ねていく。

ナビゲーターは、漠然とした怖れから解き放つようにいくつかのまとまりをもって観る者を導いていく。最初の一歩は、「がんに関する信頼できる情報発信について」どのような機関に行けばよいのか、そのホームページなどについて。「がんの治療法」の“抗がん剤”治療、“手術”、“放射線治療とクオリティ・オブ・ライフ=QOL:人生の質=”について語る三人の専門医たち。がん=死という深刻なイメージは30年ほど前の情況で、今は“がんと共存できる”時代だと異口同音にいう。放射線治療の専門医・唐澤久美子教授が、自らがんに罹患していてがん治療を行いながら研究と治療の現場で仕事を続けていることは、がん治療がどのように人生を送っていくか“QOL”に寄り添う方向にあることを見せられ励まされる。

聖路加国際病院 横断支援センターには、がん相談支援室も設けられている (C)2018 uehara-shouten

たとえ“がん”になっても人生を諦めさせない看護と支援システムについても介護現場と支援サポーター、がん経験者たちとの対話が具体的で分かりやすい。医療施設や地域の支援センターなど、がんであることの経験を受容し、分かち合えるサポートシステムが広がりつつある。その起ち上げに、がん経験者自身が“QOL”を探し、チャレンジしている姿に勇気が伝わってくる。“がんと共存できる”時代というのは、がんと独りで闘う時代ではなくなっているということを教えられるドキュメンタリーだ。 【遠山清一】

監督・撮影・編集:三宅流、企画・プロデューサー:上原拓治
2018年/日本/108分/ドキュメンタリー
配給:上原商店
2019年2月2日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開。
公式サイト http://ganninarumaeni.com/
Facebook https://www.facebook.com/ganninarumaeni/

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