《レビュー》映画「もみの家」

カルチャー

《レビュー》映画「もみの家」

心の澱を解きほぐす、自然と人の輪が育むスローライフへのすすめ

物語の舞台「もみの家」の設定は、富山県の片田舎に在る不登校児など心に不安を抱えた若者を受け入れる自立支援塾。東京から「もみの家」にやってきた16歳の少女と支援塾の寮生や土地の人たちとの触れ合い、少女のこころの中の澱(おり)が農作業をとおして自然の中でのスローライフから解きほぐされ育まれていく日々を美しく綴っている。

登校できなくなった彩花
富山の「もみの家」へ

稲穂が生い茂る田んぼを富山地方鉄道の車窓から眺める高校生の本田彩花(南沙良)と母・朋美(渡辺真起子)。駅で出迎えてくれた、不登校生などを受け入れている自立支援塾「もみの家」の主宰者・佐藤泰利(緒方直人)の車で「もみの家」に着いた。「〔もみ〕というのは、脱穀前の稲の実のことで、まだ固い殻を被った米のことなんです。家族も、我々も、時間をかけて、その固い殻を破る手助けをするんです。」と泰利は、「もみの家」の理念を彩花と母親の朋美に語る。

彩花の「もみの家」での共同生活が始まった。寮生は、新顔の彩花を含めて6人。泰利の妻・恵(田中美里)は二人目の子ども妊娠している。自分たちで収穫した野菜が食卓に並ぶ。農作業の朝は早い。だが、寝不足の彩花は、起き上がったばかりで食欲が出ない。農作業中、寮生の伴昭(上原一翔)の悪ふざけで彩花は畑に転がり落ち泥まみれになり、悔しそうに去っていく。途中、畑仕事をしていた近所のおばあちゃん大見ハナエが、泥まみれで歩いてくる彩花を見て驚いて駆け寄り「偉かったねぇ…」と声をかけてくれた。その親身な寄り添いに堰を切って泣き出す彩花。

父兄研修日に彩花の両親が参加した。彩花は家に戻りたいと両親に懇願するが、母の朋美は「学校に通えるようになるまで駄目」と覚悟した態度で答える。「もみの家」の生活に馴染めない彩花をOBの淳平(中村蒼)が村を一望できる見晴らしのいい山頂までドライブする。「もみの家」に来た理由を尋ねる淳平。彩花は、教室に居ることが息苦しくて馴染めず、そんな自分が嫌われたらどうしようと人の顔色場かり窺っていたことなど、自分の心の中に次第に澱のように固くなっていくものに悩んでいることを素直に話せた。淳平がクラスでいじめられていたとき、父親がいじめっ子には「逃げるが勝ち」と言っていた過去を打ち明け、彩花も気持ちが変わっていく。その淳平が、中学校の教師として働くことが決まり埼玉へ帰っていた。

泰利に勧められるまま秋の収穫祭で獅子舞の演者をやることになった彩花。練習が始まるとはまっていく彩花。仲良しになったハナエおばあちゃんも差し入れをもっ練習場に顔出す。稲の収穫に向けて彩花の気持ちも前向きになっていく…。

両親の期待に応えられないことに悩む彩花を、泰利は「自分のなりたい自分になればいいよ」と声をかける (C)「もみの家」製作委員会

富山の美しい自然と人々との
触れ合いで砕かれていく固い殻

砺波平野の自然が一年の四季の中で撮られていて美しい。彩花の心に絡みついていたものが、もみの家の人々やハナエおばあちゃんと出会い、打ち溶け合い、最期のお別れなどをとおして解きほぐされていく。機能と効率化に覆われていく都会の息苦しさに呻く心の叫び。その聞き取りにくい心の叫びを、ゆっくりとした時間の流れのなかで受け止め、解きほぐしていくスローライフの奥ゆかしさを感じさせてくれる作品。【遠山清一】

監督:坂本欣弘 2020年/日本/105分 配給:ビターズ・エンド 2020年2月28日[金]より富山県で先行ロードショー、3月20日[金・祝]より新宿武蔵野館ほかロードショー。
公式サイト http://www.mominoie.jp
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(クリスチャン新聞オンラインより)
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