《レビュー》映画「種をまく人」

  • 2019/12/3
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知恵役を演じた竹中涼乃は撮影当時11歳。きょうだい児の葛藤と罪と悔悟に揺れ動く複雑な内面性を見事に演じている。 (C)ヴィンセントフィルム

《レビュー》映画「種をまく人」

少女の罪と罰からあぶりだされる人間の心奥に潜む偽善と欺瞞性

本作のタイトルは、ヴィンセント・フォン・ゴッホの苦難の生涯と陽光を背に受け種をまく男を描いた一連の絵画からとられている。脚本・監督・編集を担ったした竹内監督は、ゴッホの絵画を見て以来、ゴッホが遺した手紙や絵画をもとに映画を作りたい思いを抱き、東日本大震災で荒廃した土地に咲いていた一輪のひまわりと、半年後に誕生したダウン症の姪とのかかわりが本作をつくるきっかけになったという。自己の存在が受け入れらえていないような感覚や目まぐるしい状況の変化に対応しきれない不安感と苦悩。憎悪は抱いていなくとも思わぬ行動に走ってしまう屈折した心理など、10歳の少女が犯した罪とその重さに苦しむ事件をとおして人間の心奥に潜む闇と、大人たちの偽善と欺瞞性の深溝が抉り出されていく。重い展開の物語だが、ひまわりと種をまく人のモチーフがルカの福音書8章4~8節にあるイエス・キリストの種まきのたとえが重なり合い、一条の光への希望を指し示している。

障害者のいる家族に起きたきょうだい児の葛藤と悔悟

物語は東日本大震災から数年経つが、未だ復興工事が続いているある日。高梨光雄(岸建太朗)は3年ぶりに精神病院を退院し弟・裕太(足立智充)と妻・葉子(中島亜梨沙)の家を訪れる。姪の知恵(竹中涼乃)とダウン症の妹・一希の笑顔に心癒される光雄。その夜、光雄は知恵にせがまれて被災地で見た一輪のひまわりの話をする。知恵は光雄の話を聞きながら一希が空を見上げて愛くるしい表情を見せる姿と重ね合わせる。翌日、知恵は一希を連れて光雄と遊園地へ遊びに行きたいと両親にせがみ承諾を得た。だが、その遊園地で悲劇が起こる。光雄がトイレから戻ると砂場の傍に一希が倒れていて身動きしない。知恵は呆然と立ったまま一希を見つめていた。葉子が病院に駆けつけたときには、一希は亡くなっていた。いきさつを聞く葉子に、知恵は泣きながら「おじちゃんが…落とした」と嘘をつく…。

きょうだい児少女の複雑な心理を演じた10歳の知恵役・竹中涼乃は、テッサロニキ国際映画祭などで主演女優賞を受賞している。少女は自分が嘘をついたことから家族が徐々に崩壊していく姿に耐えられなくなり、その苦悩と出来事の事実を母親に打ち明ける。あまりの衝撃に動転した母親は、「なかったこと」なのだと少女を説得する。少女の癒やされない心痛めるリアルさに引き込まれる。だが、生きていくことは苦しみのままだけではない。黙して語らず、出来事の推移を己が身に受け止め、ひまわりの種を撒いて歩く光雄。その行為の先に現れてくる光と影。「未来には、より大きな愛がある。だから我々は喜び、来るべき生活を信ずるのだ」とゴッホの手紙の言葉を想わせるラストシーンが心に焼き付いて離れない。【遠山清一】

監督:竹内洋介 2019年/日本/117分/英題:The Sower 配給:ヴィンセントフィルム 2019年11月30日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開。
公式サイト http://www.sowermovie.com
Facebook https://www.facebook.com/映画種をまく人-1197443040339315/

*AWARD* 2019年:第32回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門作品賞受賞。
(クリスチャン新聞オンラインより)

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