《講演》今までの〝難民像〟が変わった


難民キャンプ訪問の開成高校生らが特別講演会

ワールド・ビジョン・ジャパンのイベント契機に

年々その数が増えている難民。世界で避難を強いられている人数は6千850万人((2017年末時点)に上る。一方、日本では17年に1万9千629人の難民申請があったが、受け入れたのは20人というのが現状だ。日本人の難民に対する認知度の低さも問題となっている。そんな中、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ)は、私立開成高等学校(東京・荒川区)の「K-Diffusionors」(以下K━D)のメンバー5人と今年1月、ウガンダにある世界最大のビディビディ難民居住地(以下ビディビディ)を訪問。その報告を兼ねた特別講演会「高校生が『難民』を知るために難民キャンプへ 『難民問題、じぶんごと?』」が、東京・目黒区の目黒アマゾン新オフィス21階で開かれた。【中田 朗】

年々その数が増えている難民

「K━D」は難民問題に高い関心を持ち、同世代に難民問題について広く啓発することを目的として活動するグループで、開成高校のメンバー17人で構成されている。「Diffuse」は「拡散する」の意味で「Diffusionors」に「拡散する者」という意味を込める。

今回の企画は昨年、WVJが開催した難民問題啓発イベント「未来ドラフト2018〜わたしと難民がつながるアイデア・コンペティション〜」がきっかけ。このイベントに村川さんが仲間を募り応募し、特別賞を受賞。これを機に「K━D」が立ち上がった。WVJは彼らの難民問題に対する高い関心、探究心、行動力と「難民問題を同世代にもっと知ってもらいたい」という目指すゴールに賛同。グランプリ受賞チームと一緒にビディビディの訪問が実現した。

今回、ビディビディを訪問したのは、村川智哉さん、平沼昌太郎さん、中原正隆さん、松田祐和さん、森田真介さん。

難民問題というレンズ

最初に松田さんが現地で撮影し、編集したドキュメンタリー動画を上映した。難民の多くは南スーダンから逃れてきた人々だ。人が殺されるのを見たという女性、父と離れ離れになり4日かけてたどり着いたという少年、「南スーダンはいい国。紛争があったからと言って嫌いにはならない」と話す男性、「ここ(ビディビディ)は石けんも家もない。いろいろ問題がある」と不満を訴える男性…。両親を殺されるという経験をした子どもが描いた「南スーダンの殺人者」の絵に衝撃を受けるメンバーの一人の姿も映し出された。

松田さんは、「ビディビディを訪れて5人が共通して思ったことは、難民問題というレンズを通して、自分や日本について考えることができたこと」と話す。

村川さんは「幸せって何だろう」というテーマでスピーチ。「WVが運営するチャイルドフレンドリースペース(CFS)で、200人ほどの子どもたちが僕らを迎えてくれた。ここでいちばん印象に残っているのは、『めっちゃ楽しそうじゃん』という中原の言葉だった。もっと暗いのかなと考えていたけれど、実際行ってみるとそうじゃなくて、ギャップを感じた。物だけで幸せが生まれるという考えにヒビが入った」

物では計れない幸せ

「子どもたちのほぼ全員が、逃げてきた南スーダンに帰りたいと言っていたのに驚いた」と言う。「正直、物質的に恵まれた生活のほうが幸せだと感じていた。だが、物では計れない幸せに気付かされた。自分の枠から遠い難民問題に向き合ったことで逆に日本について振り返ることができた」と語った。

次に森田さんと中原さんが「あなたとわたしの『ちがい』って何?」をテーマに話した。森田さんは「両親がどこに行ったか分からない、石けんや鉛筆が足りない、兄から暴力を受けている、銃で家族が撃たれて死んでしまったと、目の前にいる人がそんな話をしてくれる。過去と今、僕らが普段暮らしている生活との違いを感じた」。中原さんは「人と人との違いというのが難民問題にはあると思う。日本は島国で、周りともあまり関わりがない。人と人との関わりにおいても大きな違いを経験することは少ない。それが日本の難民受け入れ0・2%という数字に出ている」、「私たちにも性別、好み、考え方とか違いがある。それが国と国、人種と人種という大きな違いになった時、この違いを拒絶するのか、それとも少し受け入れて自分のものにするのか。これって未来に関わること。皆さんには、違うという感覚から物事を考えてほしい」と語りかけた。

平沼さんは「日本人としての捉え方」というテーマでスピーチ。最初にビディビディで出会ったエリザベスさんという13歳の子について話した。「彼女は南スーダンで足をけがし、母親の背中におんぶされ200キロ歩いて逃げるときにポリオという病気にかかった。でも、その経験が『私は私のような人を助けたい』という高い志、医者になりたいという夢にたどりついた。彼女と出会って、『難民はつらいだろうな』という自分の物事の捉え方に先入観があったことに気付かされた」

自分の難民像のイメージ

この体験から平沼さんは、「私たちはメディアを通して自分の難民像のイメージを持つが、それはバイアスがかかった情報で、真実ではないのではないか」と指摘。「私たちは日常的に難民に出会う機会がない。そういう時に、仲介者であるメディアに頼りがちになり、本当の事実とは違った、独自の難民像が作られていくのではないか。では、どうすれば真の情報を得られるのかと考えた時に、それは行動することだと思った。行動すれば、自分事として、当事者意識をもって新しい捉え方に巡りあえる」と結論を述べた。

講演の後、話を聞いた中高生が別室で感想を語り合うワークショップの時をもった。

事務局長の木内真理子さんは「WVには『すべての子どもに豊かないのちを』という世界共通のビジョンがある。若い青年たちが自分で見て来たことを伝え、同じ世代の難民のことを考えることが、彼らの豊かないのちにつながっていくと確信している」と結んだ。

その他、安田菜津紀さん(フォトジャーナリスト)、忍足謙朗さん(元国連WFPアジア地域局長)の講演があった。

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