《N.T.ライトの神学》1 自分の神学を構築する手がかりに

  • 2019/1/9
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N.T.ライトの神学

(1)自分の神学を構築する手がかりに

大野キリスト教会 宣教牧師 中澤啓介

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プロフィール:中澤啓介
私は、高校1年のときに、人は何のために生きているのだろうという疑問をもち、キリスト教会を訪ねた。そこで、聖書を読み、神を信じるようになった。以来、神は私のどんな問題でも解決してくださることを経験してきた。そのような体験から、何か他の人の役に立ちたいと思うようになり、牧師になった。あなたが、どのような問題をもっていても、一人で悩んで、閉じこもってしまわないでほしい。問題を解決してくださる神を知ってほしい。どうぞ、遠慮なく声をおかけください。あなたの人生がすばらしい歩みになるようにと、お手伝いさせていただければ嬉しく思う。
1942年生まれ。大学では哲学専攻。家族は妻のみ。二人の子どもは結婚して、孫も二人。

聖書理解を振り返り

8回にわたり、「N・T・ライトとは誰か」を紹介してきましたが、ライトを知るには、言うまでもなく彼の書物を読むのが一番です。といっても、英語の原書を読むのは容易ではありません。それでも、ライトが今話題の聖書学者・神学者であるなら、たとえ表面的であっても、教養程度であってもよいから、ザクッと知っておきたいという方々も多いかと思います。そのような方々のために、ライトが何を考え、どのようなことを主張しているのかを簡単に紹介したいと思います。ライトの奥深い信仰、斬新な切り口で展開する聖書解釈の妙技をわずかでも味わっていただければと思っています。

もとより私自身は、ライト研究家でも、ライトファンでもありません。自然災害大国と言われる日本の教会を牧会する中で、自らの内側に起こった「キリスト教信仰の認知的不協和」を何とか解決したいともがき続けている一牧師にすぎません。正直に言えば、自然災害の問題の解決の糸口が見つかるのではないかと、ライトの『悪と神の義』(2006年)をむさぼるように読んだのですが、何のヒントも得られず、やり場のない怒りを感じた者でした。

そのとき、啓蒙主義に毒されているキリスト教からの解放を叫ぶライト神学の方向性に共鳴しながらも、啓蒙主義が提起した問題を真正面から受け止めるキリスト教神学を構築し直さなければだめだと思いました。そういうわけですから、読者にライトの信奉者になっていただきたいわけではありません。ライトにはライトの限界がたくさんありますが、まずは真摯に彼の主張に耳を傾け、そこからライトを越えてご自分の神学を築いていただきたいと願っています。

以下のライト神学のまとめは、ライトの膨大な書物の中で、筆者が特に感動した部分を筆者自身の言葉で要約したものです。できるかぎりライトの文章をそのまま伝えるべきでしょうが、そうすると複雑な翻訳文となり、無駄な繰り返しも多く、前後の文脈を解説したり、脚注をつけないと意味不明ということになります。ライト的な雰囲気を残す努力を最大限しつつも、ライトが言わんとする趣旨を要約して紹介するに留めざるを得ません。

ライトの主張をおおまかにつかんでいただき、自分の信仰や聖書理解に振り返りの時をもっていただければ、それで十分です。もしおかしいと思うところや、分からないところがあれば、読み飛ばしていただくのが一番です。これまで自分が信じてきたことに確信をもち続けて信仰生活を歩むことはとても大切です。

しかし、ライトの言っていることに、今まで気づかなかったことや、面白い点、従来の教えより納得できる事柄もたくさん出てくるはずです。そういう文章に出くわしたときには、言及されている聖書個所を開き、前後の文脈を読み返しながら、ライトの文章を反すうしていただければと思います。必ずや、ご自分の信仰を広げていただけると思います。

筆者は、すべてのキリスト者が自分の名前をつけた神学を構築してほしいと考えています。私であれば、「中澤啓介の神学」です。それは、自分が今、現に「神によって置かれている場所」で、「神から託されている使命」を果たすに十分間に合う神学でなければなりません。そのような神学は、・自分が置かれた現場で直面している問題に真摯に向き合うところから出発し、・これまで受けてきた聖書の知識、宗教体験、関連する教養を基に考え、・自分の周囲の人々(書物を含む)と対話を繰り返しながら熟成させていく、という3つのプロセスを経て構築されます。

神はキリスト者に、「霊的な知恵と理解力」(コロサイ1・9)や「真の知識とあらゆる識別力」(ピリピ1・9)を備えてくださっています。キリスト者一人ひとりは、そのような能力を聖霊の導きと助けの中で働かせ、祈りの中で自分の神学を一歩一歩築いていくものです。そしてその神学は、「キリストとの共同相続人」(ローマ8・17)あるいは「王である祭司」(・ペテロ2・9、黙示1・6、5・10)として、この世界を治めていく使命に役立つものでなければなりません。

これからライトの神学をご一緒に考えるのですが、何のためにこのような学びをするのか、その最終ゴールをはっきり見定めて取り掛かることはとても大切なことです。何をするときでも同じですが、その目標が曖昧であったり、ぶれたりすると、無駄な時間とエネルギーを消費したなと疲労感が残るだけになりかねません。〈2に続く〉(クリスチャン新聞連載)

使徒パウロは何を語ったのか
N・T・ライト 著
新教出版社  定価:2,400 円+税

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