《麻原死刑囚ら死刑執行》事件後の教会を振り返る

  • 2018/7/17
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問われた宗教の自浄能力

本紙が追ったオウム真理教事件

7月6日、オウム真理教関連の事件で死刑が確定していた13人のうち、元代表の松本智津夫(麻原彰晃)死刑囚を含む7人の死刑囚の死刑が執行された。一連の事件では、1989年11月の坂本弁護士事件、94年6月の松本サリン事件、95年3月の地下鉄サリン事件など、計13の事件で27人が殺害され、負傷者は6000人を超えた。無差別テロという事件の特異性に加え、宗教団体による犯行であることは、キリスト教会も自らの問題として向き合わざるを得なかった。事件発生後の社会とキリスト教会を振り返る。

オウム事件がキリスト教会に問いかけたものは何だったのか─クリスチャン新聞は松本・地下鉄の両サリン事件がオウム真理教による犯行であることが判明して以来、様々な角度からこの問いに向き合ってきた。仏教思想を背景に持ちながら「ハルマゲドン」など聖書の用語も使って終末的な危機感を煽った末のテロ事件は、対岸の火事ではすまなかった。

まず紙面に現れたのは、オウムの暴発を止めることができなかった宗教界の反省だ。地下鉄サリン事件後、なぜオウムのような危険な宗教を野放しにしていたのかという世論が急速に広がり、宗教法人法を改正して宗教団体をもっと厳格に国が管理するべきだという声が高まった。その中で宗教界からは、国家による宗教管理を警戒するとともに、公権力の介入を防ぐには宗教者自身が危険な破壊的カルトを抑止する自浄能力が問われるという議論が起こった。

クリスチャン新聞
1995年5月28日号

オウムの異常性に気づいていながら介入できなかった仏教界を中心にそうした問題意識が高まり、宗教者と法曹関係者、学術関係者らを集めたシンポジウムも開かれた。しかし、信教の自由や各宗教団体の独立性などの観点から、簡単に結論は出なかった。

カルト性を見分ける指標作りや予防策の提言

だが、そうした中から1995年11月、心理学者、牧師や仏教関係者、臨床心理士、精神科医、宗教社会学者らによって日本脱カルト研究会(現・日本脱カルト協会)が発足。カルト性を見分ける指標作りや予防策の提言、情報交換や研究などに取り組み、出版物やビデオによる啓発活動も展開された。

やがて麻原彰晃(本名・松本智津夫)やテロ実行犯らの裁判が進み、死刑判決が出てくると、マインドコントロールによって信者たちをテロに駆り立てた教祖と、教祖にマインドコントロールされて犯行に及んだ実行犯の責任度合いは同等なのかという議論が、弁護士やオウム信者の家族らから出てきた。だが化学物質による大量殺人という犯行の残虐性から、犯人に極刑を求める世論は根強かった。カルト問題に普段触れることのない一般の人々にはマインドコントロールの実態は理解し難く、処罰感情は拭いがたいものがある。

これはキリスト教にとっても他人事ではない。「異端」とされるキリスト教系のカルトにおいても、マインドコントロールされた信者たちが組織のいいなりになって脱法行為に手を染める例は後を絶たない。中には米国のブランチダビディアンのように、極端な終末思想につき動かされて武装闘争に走る組織もある。日本でよく知られる「異端」教団の元信者はクリスチャン新聞のインタビューに対し、「教祖が武器を取れと命じたら自分も従っていただろう」と振り返った。

カルト団体を脱会した元信者らは、社会からの冷たい視線にさらされるのが常だ。元オウム信者でクリスチャンになった人もいるが、以前オウムに関わっていたことが知られれば就職や転居にも差し支えると証言した。そうした社会の無理解が元カルト信者の社会復帰と回復を阻み、行き場を失って元の団体に戻ってしまうといったジレンマも報告された。

地下鉄サリン事件から23年。教祖らに死刑が執行された今もこれらの問いに答えは出ていない。

 

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