ノアとは?

ノア…

⒈([ヘブル語]nōah,[ギリシャ語]Nōe) レメクの子(創5:28‐29).洪水前の10人の族長の最後の人物であり,洪水記事の中心人物.ノアという名の語源について,多くの注解者はそれを「休める」([ヘブル語]ヌーアハ)に関連させているが確かではない.創5:29ではレメクによって「慰める」([ヘブル語]ナーハム)に関連づけられているが,ヘブル的な語源の説明は言語学上の理由によるとは言えないので,これは必ずしもテキストの間違いとは言えない.
ノアは「正しい人」(創6:9)であった.後に聖書は彼の「正しさ」を「信仰による義」(ヘブ11:7)と言っている.彼は背信と不道徳の時代(創6:1‐5,11‐13,マタ24:37‐38,ルカ17:26‐27)にあって,「全き人で……神とともに歩んだ」(創6:9).ノアは神の心にかなう生活によって,堕落した民に「義を宣べ伝えた」(Ⅱペテ2:5)が,受け入れられなかった.他の初期の族長たちのように,ノアは主から長寿をもって祝福された.彼に初めの子が生まれたのは500歳の時であった(創5:32).洪水が起こったのが600歳の時で(創7:11),950歳まで生きた(創9:28‐29).もし,創6:3の120年を神の恵みによるさばきの執行猶予の期間と考えるならば,ノアはその期間に箱舟を建造し,人々に義を宣べ伝えたと考えられる(参照Ⅰペテ3:20).しかし悔い改める者はなく,箱舟に入ったのはノアと3人の息子とその妻たち4人,それにすべての種類の動物から選ばれた雌雄だけであった(創6:13‐7:9).その7日後大洪水が起こり,彼らを除いて地上のすべての生き物はことごとく滅ぼされた(創7:10‐23).
洪水の後に農夫ノアはぶどう畑を作り始めた(創9:20).ここから,ノアがこの時から農夫になったと考えたり,彼がぶどう作りを始めた最初の人であると理解するのは正しくない.ある日ノアは酩酊し,天幕の中で裸になっていた.それを見たハムは,兄弟のセムとヤペテに知らせた.セムとヤペテは父の裸を見ずに着物で父を覆ったが,ハムは何らかの悪い意図で父の裸を注視したのであろう.酔いからさめて事の次第を知った時,ノアは,このハムの行為との関連で彼の子孫カナンの堕落を霊的に洞察し,カナンをのろった.
神はノアと契約を結ばれた.それは,洪水によって全人類が滅びた後,「生めよ.ふえよ」というアダムへの約束は,ノアとその子孫を通して果たされるというものであった.神はすべての肉なるものを決して再び洪水で滅ぼさないと約束され,虹をもってその契約のしるしとした(創6:18,9:9‐17.参照イザ54:9).この契約のおもな特質は,それが全く神によって制定されたものであり,その及ぶ範囲は普遍的であり,また無条件で,永遠に続くものであるということである.
ノアは,セム,ハム,ヤペテの3人の息子を得た(創5:32,9:18‐19,10:1).セム,ハム,ヤペテという順序は必ずしも年齢順ではない(参照創9:24).彼らは洪水前に生まれ,洪水後全世界の民は彼らから分かれ出た(創9:19.参照創10章の民族表).
聖書外にも楔形文字による洪水物語がある.最も完全な形で残されているのは,アッシリヤのニネベにあったアッシュール・バーン・アプリの図書館から発見された「ギルガメシュ叙事詩」(前7世紀)である.その英雄の名はウト・ナピシュテムである.これは当時の古典を写したものであり,このアッカド語版の背後にあるのはおそらく,シュメール語版の洪水物語(前2千年期)であろう.そこでの英雄はジウスドラである.また,古代バビロニヤの「アトラ・ハシス叙事詩」(前2千年以後)も洪水物語を含んでいる.アトラ・ハシスはその英雄の名である.(詳しくは本辞典「こうずい」の項を参照).
⒉([ヘブル語]nōʽāh) ツェロフハデの娘の一人(民26:33,27:1,36:11,ヨシ17:3).

(出典:後藤敏夫『新聖書辞典 新装版』いのちのことば社, 2014)

新装版 新聖書辞典
定価6900円+税
いのちのことば社

キーワード検索

いのちのことば社 

東京都中野区中野2-1-5 TEL.03-5341-6911

いのちのことば社 

東京都中野区中野2-1-5 TEL.03-5341-6911

ページ上部へ戻る